1.調停(メディエーション)とは何ですか?
紛争の当事者自身が話し合って合意し、解決できるように、第三者(調停人)が支援する手続を言います。
2.交渉と調停の違いは何ですか?
2人で話し合うときと、3人で話し合う場面を考えてみて下さい。それぞれ、話し合いの進行の仕方が変わります。例えば、相手の無知につけこんで押し切ろうというやり方は、2人のときは容易でも、中立な第三者の前ではやりにくいでしょう。また、お互いに感情的に攻撃し合っているときは、それぞれにとって何が大切かを話し合うのは難しくなります。公正で納得できる結果に至るために、両当事者と調停人の三者で話し合う手続が調停です。
3.紛争は悪いものですか?
もめごとや紛争には、悪い面ばかりがあるのではありません。もめごとは、互いに状況をなんとかしたいというエネルギーのぶつかり合いで生まれます。そのエネルギーを建設的に向けられたらという願いがあります。愛の反対は憎しみではなく無関心だという言葉がありました。かみ合った話し合いが大切だと考えます。
4.なぜ、民間の調停を普及させる法律(注)が最近できたのですか?
(注:ADR法=裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律。2004年成立、2007年施行。)
この法律は司法制度改革のひとつとしてできたものです。しかし、国がこの法律をつくった本当の理由はわたしにもよくわかりません。
ただ、以下のようなことは言えるでしょう。明治以降、わが国では伝統的に、裁判は使いにくいものでした。ひとつには、外国の制度をそのまま取り入れたものでわかりにくかった事情があります。また、裁判所に充分な予算を割り当てられなかったために、市民にとって使いやすいものにできなかったという事情もあります。そもそもわが国は、裁判ではなく、血縁、地域社会、職場その他の人間関係の中で解決されることが多い社会だったといえるでしょう。しかし、閉鎖的な共同体では様々な複雑な問題の面倒を見きれなくなりつつある現在、当事者の話し合いをしっかりと支える仕組みが必要とされてきているのではないでしょうか。
5.裁判所の行う調停と、裁判所以外で行う調停には違いがありますか?
例えば、離婚後の子どもの養育費を決めるのに、家庭裁判所での調停が使われています。裁判所の調停は、調停委員が中心に、書記官その他の支援も得て、裁判官の関与の元に進められる手続です。一般的には、弁護士をつけなくても実施できるメリットがあります。裁判所の調停手続は安価ですし、権威もあります。司法書士会や弁護士会等、裁判所の外で行う調停では、後発として裁判所以上の魅力を作るために、様々な工夫をする必要があります。当事者が主役の話し合いを進行するための調停トレーニングへの取り組みもその一例と言えます。
6.当事者が主役の調停では、調停人は何もしてくれないのですか?
いいえ。真に当事者が主役の話し合いを進行するのは、大変です。調停人にとって技術も忍耐力も体力もいる仕事です。もめている人に向かって、あなたがたがお互いに譲りあって解決して下さい・・と言うだけで、もめごとが解決するでしょうか?もちろん違います。お互いに割り込まないで話し合いをしましょうといったささいな(しかし重要な)ところから始まって、お互いに自分の大切なことは何かを考え、相手の立場や必要とするものも理解しあうように支援します。そして、最終的には、どうやってお金を渡すのか、例えば振込手数料はどちらが負担するのかといったことまで決めなければなりません。こうした「話し合いの流れ」の全体を支えるのが調停人の仕事です。
7.調停はどのような紛争の解決に向きますか?逆に、調停が向かない紛争はどんなものですか?
調停は、ほとんどありとあらゆる紛争の解決に向いています。特に、男女間や親族間の紛争、近隣紛争、労働紛争などは単に金額面の問題だけでなく、感情を含め、総合的に問題を解決するため、裁判よりもむしろ調停が良いと言われています。企業同士の紛争、不動産賃貸などの紛争も調停に持ち込まれます。最近では、医療トラブルの予防と解決のために、院内調停(院内メディエーション)が注目されています。また、公共施設の建設など、公益的な紛争解決でも利用できます。
しかし、調停では、世の中に大きな影響を与える「判決」を得ることはできません。例えば、サラ金の過払いにしても、英会話の中途解約にしても、判決が出たからこそ、それ以降の解決の道が開かれました。このような効果は、秘密の話し合いで解決される調停には期待できません。
8.調停の成功例を教えて下さい。
下請業者が元請業者から約束していた代金の支払いを受けられず、住宅の建築を中断してしまったという紛争がありました。元請業者の資金繰りが苦しかったためです。工事の完成がされずに困っている施主も交えて直接話し合いが行われました。相互に事情を理解し合った上、元請業者の謝罪や、施主にとっての残金を下請業者に直接支払うなどの決めごとも行って、それぞれが納得した解決に至りました。それぞれの権利を突きつけ合うだけでは、なかなかこのような解決には至りません。
9.海外では、調停は盛んですか?それはなぜですか?
はい。この30年くらいの間に盛んになってきました。特に40年ほど前にアメリカで実験的に始まったコミュニティ調停の動きが重要だと考えられています。これは、貧しい地域も含めコミュニティの中での問題を、市民同士が話し合って解決しようという社会正義運動から始まっています。アメリカをはじめとして西欧社会では、証拠と論理で勝ち負けを決める裁判のみが正しい紛争解決手段とされてきました。裁判には、人間関係の回復や、再発防止を含めた将来への取り組みを考える上ではあまり役に立たないという限界があります。西欧における調停は、部分ではなく全体を指向する東洋文化の影響も受けて拡がってきています。
10.調停トレーニングとはどんなものですか?わたしが参加できますか?
はい、誰でも参加できます。調停トレーニングでは、調停人としてどのような工夫が紛争解決に役に立つのか、逆にどんな落とし穴があるのかを学びます。海外では、子ども向けの調停トレーニングも盛んに行われていることからも分かるとおり、受講者は法律専門家に限りません。調停スキルは、例えば、会社のなかでプロジェクトをよりよく進める会議手法としても活用できますし、妻が夫に、あるいは、夫が妻にしっかりと主張するといった対等な人間関係を身近に実践していく道具としても学べます。(学んでいても、大変には違いがないですけれど!)調停トレーニングは、様々なところで実施されるようになってきていますので、機会があればぜひ参加してみて下さい。ロールプレイを始め、様々に楽しめるよう工夫され、飽きさせないものになっているはずです。

